熱交換システムの役割とは?メリット・デメリットや仕組みを紹介
「熱交換システムとは?」
「熱交換システムはあったほうがよい?」
新築を検討している方やリフォームを考えている方は「熱交換システム」を聞いた経験があるでしょう。
熱交換システムは住宅用語のため、あまり馴染みのない言葉ですよね。
そこで今回は、熱交換システムとは何かをはじめ、仕組みや取り入れるメリット・デメリットを解説します。
また、どのような住宅にあるとよいのかも紹介するので、ぜひご覧ください。
そもそも熱交換システムとは?概要をわかりやすく解説
熱交換システムとは、24時間換気システムの一つです。
24時間換気システムは「エアコンの効いた室内に生ぬるい風が入ってくる」「暖かい部屋なのに隙間風のような冷たい空気が入ってくる」のように、室内と外気の温度差が問題です。
その問題点を解決してくれるのが、熱交換システムです。
熱交換システムは、外気を室温に近づけてから空気を取り込むため、室温を一定に保ちやすくなります。
熱交換システムの仕組みとは?種類ごとに解説
熱交換システムには、以下の2種類があります。
● 全熱交換器
● 微熱交換器
どちらも給気・排気のシステムはほとんど同じです。
排気する室内の空気から熱を取り出し、外気にその熱を利用して室温に近づけて空気を取り込む点は共通しています。
ただし、どういった住宅に適しているのかが異なるため、詳しく見ていきましょう。
1.一般的なのは全熱交換器
熱交換システムの場合、多くの家庭では全熱交換機を採用しています。
全熱交換器のシステムは、換気しながら空気の熱と湿度の両方を交換する仕組みです。
全熱交換器がスタンダードになっている背景には、法律の改正があります。
2017年の建築物省エネ法の義務化に伴い、建築物を建てる際には省エネ基準への適合性判定が必要になりました。
そこで、合否の判断基準となる基準設定空気調和設備の一つに熱交換システムが取り入れられ、全熱交換器がスタンダードになったわけです。
2.寒冷地で利用されるのは微熱交換器
微熱交換器は、換気しながら空気の熱のみを交換し、湿度を通さない仕組みになっています。
空気中の湿度が低いと体感温度が下がり、湿度が高いと体感温度が上がるメカニズムを利用しています。
そのため外気湿度が低い寒冷地では、全熱交換器ではなく、微熱交換器を採用するケースが多いわけです。
熱交換システムを利用する3つのメリット
熱交換システムを利用するメリットは、主に3つあります。
1. 室温を保ちやすいため省エネになる
2. 給気・排気どちらも機械のため換気の確実性が高い
3. 結露を防止できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.室温を保ちやすいため省エネになる
熱交換システムは換気による室温の変化を抑えられるため、暖房や冷房の使用量を軽減でき、省エネになります。
熱交換システムは、排出する室内の空気の熱を取り出し、その熱を利用して外気を室温に近づけてから取り込むからです。
三菱のデータによると、床面積2,620㎡の4階建てビルにおいて、全熱交換器がある場合とない場合のエネルギー消費量は以下のとおりだとわかりました。
● あり…0.68
● なし…0.71
※全熱交換器の性能を最低値で計測した場合
全熱交換器の性能を最低値で見積もった場合でも、熱交換システムがない場合は4%もエネルギー消費量が増えます。
2.給気・排気どちらも機械のため換気の確実性が高い
熱交換システムは給気・排気どちらも機械で行うため、換気の精度が高くなります。
給気を自然に任せる第3種換気の場合、室内の空気を確実に入れ替えるのは難しいです。
熱交換システムであれば、家や家具に使われる防腐剤「VOC」を吸い込むと発生するシックハウス症候群防止をはじめ、室内の空気を常にきれいに保てます。
3.結露を防止できる
熱交換システムは、現代の住宅のスタンダードになりつつある高断熱気密住宅に置きやすい結露を防ぐものとして活躍します。
高断熱気密住宅はその名のとおり、従来の住宅よりも気密性が高いため、室温が保たれやすくなります。
ただし、うまく換気されていないと湿気がこもってしまうため、結露が発生してしまうのです。
熱交換システムのうち全熱交換器であれば、換気しながら熱と湿度も外気と交換してくれるため、結露ができにくくなります。
熱交換システムを利用する3つのデメリット
熱交換システムを利用するデメリットは、主に3つあります。
1. 初期費用がかかる
2. 定期的なメンテナンスが必要になる
3. 冬は室内が乾燥しやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.初期費用がかかる
熱交換システムは給気・排気ともに機械を使用するため、ほかの第2種・第3種換気よりも初期費用がかかります。
設置する際には、以下のような費用が必要になります。
● 機器代
● 工事費
● 電気工事
● ダクト工事
ただし種類によっては費用を抑えられる場合もあるため、設置場所やスペースに合った機器選びが大切です。
2.定期的なメンテナンスが必要になる
熱交換システムは定期的なメンテナンスが必要になるため、ランニングコストがかかります。
メンテナンスの中では、フィルター交換の頻度が一番多いです。
ただし熱交換システムを導入すると省エネ効果があるため、これらのコストを回収できるかどうかの試算が重要です。
3.冬は室内が乾燥しやすくなる
熱交換システムのうち全熱交換器の場合は、空気の熱と湿度の両方を交換するため、冬は室内が乾燥しやすくなります。
寒い冬は外気の湿度が低く、全熱交換器で外気を取り込むと室内の湿度も下がりやすくなってしまいます。
ただし、乾燥に関しては普段から加湿器を利用している家庭も多いため、そこまで大きなメリットではないでしょう。
寒冷地では、全熱交換器よりも空気の熱のみを交換する微熱交換器が適しています。
熱交換システムがあるとよい住宅の特徴
熱交換システムがあるとよい住宅は、高断熱気密住宅です。
高断熱気密住宅はその名のとおり、気密性の高い住宅のため、室温を保ちやすい点が特長です。
ただし、24時間換気によって室温が変わってしまうとその利点が活かされません。
そこで熱交換システムがあると、より断熱気密住宅のよさを活かせるのです。
また全熱交換器を導入すれば、結露を防止して室温も一定に保ちやすくなります。
まとめ
本記事では、熱交換システムの概要や導入するメリット・デメリットを解説しました。
熱交換システムは、現代の住宅においてスタンダードになりつつある断熱気密住宅には欠かせない換気システムです。
断熱気密住宅を検討している方は、特徴を理解したうえでぜひ熱交換システムの導入も検討してください。